インターネットミニ染織講座

紕帯のできるまで(紕帯レプリカ完成)

 

生地を紕帯の形状にする<仕立て>からの続きです。

 

2013年6月より取り組みを始めた紕帯レプリカ制作は、約10ヶ月の歳月をかけて2014年3月に完成しました。

レプリカ(左)オリジナル(右)
【拡大】レプリカ(左)オリジナル(右)
【柄】レプリカ
【柄】オリジナル
【生地拡大】レプリカ
【生地拡大】オリジナル

 

オリジナルに比べレプリカは生地に若干厚みがあり、しっかりとした感触。オリジナルは経年劣化の影響や昭和初期の糸の良さがあらわれているのか、かさが低く、非常に軟らかです。
刺繍はほとんどオリジナルと遜色ありませんが、オリジナルは経年劣化で刺繍糸の色が褪せつつあります。
オリジナルには時の流れの中での独特の味わいがあり、経年劣化が逆に重厚感をあらわしているような雰囲気がありますが、今後オリジナルにかわりレプリカがその役目を引き継ぎ、形あるものの宿命である経年劣化の影響を受けながら、独特の味わいをもった紕帯へと変化を遂げていくでしょう。

レプリカは今後美術館等への衣装貸付や当協会セミナーでの展示など、オリジナルの代わりとして次代に繋げて利用していきます。ぜひ機会がありましたらこの制作工程を思い出しながらレプリカの実物をご覧いただければ幸甚です。

 

 

<紕帯レプリカ制作を終えて>

 

オリジナルが制作された昭和6年(1931年)から、ゆうに83年の歳月を経て今回レプリカ制作に取り組みました。
当時使われた技術を用いて再制作することを第一に踏まえながらも、「本当に出来るのか」と若干の不安を抱えながら挑みましたが、全く心配には及ばず、多くの職人さんたちの協力を得て、完成することができました。
今回改めて感じたのは、京都には83年の歳月を経ても当時と全く変わらず高度な染織技術が息づき、日常的に使われているという事実です。もちろん当時とは比べ物にならないくらい職人さんたちの数は減っているのでしょうが、それでも技術の存続は今も脈々と続いているのだということを改めて知ることができました。
今回のレプリカ制作の工程でお会いした職人さんたちが口々に言われていたのは「道具を作る人がどんどんやめていき、将来的に道具が無くなるかもしれない。そうなると続けたくても続けられない」というお話でした。引染に使う刷毛などはその代表的なものですが、染織技術を支える道具の衰退が技術の存続そのものを脅かしていることは今回の取り組みで知ることができた現場の実情でした。
「染織技術の存続と継承」は当協会が活動目的の一つとしているものですが、自然の流れとして『必要とされている技術』は発展を繰り返しながら存続し、次代に継承されていくものです。ライフスタイルの変化によるきもの離れが叫ばれて久しいですが、古くは平安時代から育まれてきた日本独自の衣服であるきもの文化は日本人のアイデンティティそのものであり、決してなくなるものではありません。技術の存続と継承には生活者である我々も深く関わっているのだということを忘れず、これからも当協会活動に邁進していきたいと思っております。