<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

  

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

ご質問・ご要望はまで。

 

 

インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・室町時代12号(完成)

 

7.完成

平成29年の着手から3年目となる令和1年10月23日、辻が花の複製(これからは「新衣装」と呼びます)が完成、納品されました。制作を進めていく中で、現場を取り巻く様々な事情に直面し、制作に関わる方々と常に最良の方法を考えながら乗り越えてまいりました。ついに出来上がりました。感慨深いです。
では早速新衣装を見ていきましょう。

 

 

完成した新衣装

 

新衣装(右)と旧衣装(左)。旧衣装の内側の生地の色をもとにした。

 

(上段)旧衣装、(下段)新衣装

 

 

(旧衣装)
【制作年】
昭和6年〜8年(1931年〜1933年)

【衣装情報】
(生地)練緯
(技術)染め分け、絞染、かちん描き(辻が花)
(復元)室町時代の小袖裂の柄を復元し、裂から全体像を構想し、小袖形に完成させた。
※実物の裂は根津美術館(東京)、遠山記念館(埼玉)が収蔵。

【制作方法】
下絵→染め分け→染色→かちん描き→仕立て

【制作者】
制作   染織講社
時代考証監修   関 保之助/猪熊浅麻呂/出雲路通次郎/江馬 務/吉川観方/高田義男/猪飼嘯谷/野村正治郎
調整   松下装束店/荒木装束店/田装束店




(新衣装)
【制作年】
平成29年〜令和1年(2017年〜2019年)

【衣装情報】
(生地) 羽二重
(技術) 染め分け、絞染、かちん描き(辻が花)
(復元) 旧衣装をもとに復元した。
※練緯は技術継承が途絶えているため制作が出来ず、羽二重を使用した。

【制作方法】
下絵→染め分け→染色→かちん描き(下絵)→かちん描き→仕立て

【制作者】
制作     公益社団法人京都染織文化協会
監修     京鹿の子絞振興協同組合
下絵     伝統工芸士 後藤和弘
染め分け  伝統工芸士 木純一
染色     伝統工芸士 太田英雄
かちん描き 伝統工芸士 松本忠雄





 

─制作を終えて─
復元制作が決まり、職人選定のため京鹿の子絞振興協同組合の部会長の皆さんに集まって頂いたのは平成29年2月のことでした。同年4月より制作がスタートし、完成まで約3年。職人の皆さんは「新しいものを作るよりも複製を作るほうが難しい」と言いながら、旧衣装の良さを新衣装にも反映させ、持ちうる技術を最大限に発揮し、素晴らしい衣装を完成させて頂きました。
旧衣装は完全な誂えで、模様の形状は手描きで作られています。制作作業を進めていくにあたり、当協会・監修者・職人の間で次の通り申し合わせをしました。

1.旧衣装の模様は完全反映する。
2.新衣装の色は旧衣装の内側の生地の色で合わせる。(表側の色は退色しているため)
3.旧衣装の失敗箇所(染ムラ、欠落等)は新衣装には反映しない。

現代のものづくりはデジタル社会を背景に、秩序正しい整然とした美、完成度の高いものづくりが目指されているように感じます。旧衣装は模様の形状が均一でなくても、それは衣装の個性であり味であるという考えのもと、唯一無ニのものづくりを目指したのではないでしょうか。制作方法、制作意識が変化している中で、旧衣装の良さを新衣装に完全反映するために、全ての模様を紙に写し、写した模様をもとに下絵を描くという手間のかかる作業をして頂きました。そのような理由等もあって当初の計画である平成31年3月末日完成には至らず、令和1年10月23日に完成、納品となりました。後継者が居ない、道具供給の不安など、今回作業に立ち合う中で様々な問題に直面する職人達の現場も垣間見ることができました。そのような中で、道具の一括確保や職人同士の繋がりなどに組合が非常に重要な役割を担っていることもわかりました。
新・旧衣装は2020年3月の「京都市伝統産業の日」にて公開する予定です。詳細が決定しましたら当協会facebookにて告知しますので、お楽しみに。

 

 

    平成29年2月、初めて旧衣装と対面。皆様、お疲れさまでした。

 









 

 
 
 
 
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