<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

  

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

ご質問・ご要望はまで。

 

 

インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・室町時代5号(染め分け)

 

5.染め分け(帽子絞り)

糸入れの作業を終え、染め分け作業となる帽子絞りを施していきます。この作業をして下さるのは糸入れに引き続き伝統工芸士の福濱弘恭さんです。地色が赤の室町5号は、横段は白地に雪輪模様と辻が花、斜めは絞りの花びら模様で構成されています。染める順番としては、まず雪輪模様を部分的に赤に染めます。次に地色を赤に染めるため、雪輪や花びらの部分を防染する小帽子絞り、横段を防染する大帽子絞りを施します。辻が花の部分は職人自らが着色するため、ここでは同じく防染をしていきます。斜めの花びら柄に施された小帽子絞りはなんと1400個。気の遠くなる作業が続きましたが、大帽子絞りの段階まで進み、作業は終盤を迎えました。今回は大帽子を絞る工程を見ていきます。

 

室町5号



まずは小帽子。1400個の小帽子は、芯に新聞紙などの紙を丸めたものを使い、紙からの汚れを防ぐために薄いビニールに包んで絞ります。紙の芯は水に浸けると膨張して広がり、括り糸で一層強く締め付けられるので、染料の侵入を防ぐことができます。また、絞りは小さいほど括り糸が緩みづらく、大きいほど時間の経過とともに緩んできます。そのため絞る順番は、小さいもの(小帽子)から大きなもの(大帽子)へと移ります。大きい絞りはどれほど強く括ってもおよそ3、4日で糸が緩み始めるため、それまでに染めるか、時間がかかるときは糸を水で湿らせて、糸の膨張により締める力を強くします。



地色の赤に染めない箇所を防染 雪輪の染めた部分と染めない部分
小帽子で花びらの防染 小帽子の中は紙の芯


それでは大帽子絞りの作業です。大帽子絞りを施すのは横段の部分。ここは地色の赤に染めない白地の部分になるため、横段全体を防染していきます。まずは糸入れの工程で染める所と染めない所の境界となる部分に糸を入れたので、その糸を手繰り、絞り寄せていきます。手繰り寄せる際には糸を入れた部分に生地が重ならないように丁寧に生地をほぐし、絞り寄せた生地は、直径6p程の丸い芯に巻いていきます。樹脂製の芯に生地を巻き付けていき、生地と芯に段差がつく箇所には隙間を作らないよう紙をかませ、全体を綿糸で巻いていきます。この時、綿糸が重ならないように巻き付けるのがポイント。糸が重なるとその隙間から染料が入る可能性が出てきます。染料が入り込まないように細心の注意を払って巻き付け、更に糸周辺に防染効果のあるふのりを刷毛で縫っていきます。

 

生地を絞り寄せる 生地に芯を巻き付け、糸で括る
芯と生地の段差は紙で調整 ふのりで更に防染

 

動画で見てみましょう。

 

 

次に二重にしたビニールを芯の入れた部分に被せ、芯の端に合わせて、水で湿らせた麻糸を巻き付け、器具に引っ掛けて、力を入れながら何度も巻き上げていきます。ここでも糸が重ならないように巻き付けていき、余分なビニールを切り落とします.

    ビニールを被せる     芯の端から糸をかける
     力を入れて巻き取る      何重にも巻いていく
   余分なビニールを切り落とす          完成

 

動画で見てみましょう。

 

 

海草のふのりは、煮て液状にして用いる防染糊で、昔は国産が使われていましたが、今は中国産が主流になりました。国産のふのりは透明ですが、中国産は黄色いため、生地は念入りな水洗いが必要になっています。また大帽子に使用する芯は、昔は硬いヒノキが使われていました。しかし今では国産ヒノキは高級品となってしまい、外国産ヒノキは杢目が詰まってないため、防染に不向きなのだそうで、代用として樹脂の芯が開発されました。きものは日本の伝統的な衣服ですが、その制作に必要な道具や材料が国産の天然原料でなくなっているという現状を知り、複雑な気持ちになりました。

 

    現在使われているふのり       染め分けの完成




この日の工程は、

→染める順番を確認する。
→花びらの模様は小帽子に括って色が染まらないようにする。
→横段は地色を染める部分と染めない部分との境目に芯を入れて括り、
  更にビニールを巻いて防染する。

 



次は染色の作業です。



 

 

 

 

 
 
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