<スタッフ紹介>

        北川学芸員とその助手

    

 

  

 

 

時代衣装の構成と使われた技術についてわかりやすくご説明します。素人撮影のため見辛い箇所があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

ご質問・ご要望はまで。

 

 

インターネットミニ染織講座

衣装復元制作・江戸時代初期2号(手描友禅)

9.手描友禅

手描友禅の作業です。この衣装で行う手描友禅は、衣装全体を埋め尽くす黒の竹垣と、匹田染となる団扇の模様です。特に竹垣の黒については、復元を行う上で重要な課題でもありました。そもそも色は赤・黄・青の三原色をベースに、配合によって様々な色を作ることができますが、黒を作るのは難しいとされ、青味の寄りの黒、赤味寄りの黒など、ひとくちに黒といっても多くのニュアンスが存在します。旧衣装の竹垣の黒もそのひとつ。真っ黒でありながら青味寄りの深みのある黒で、この黒を再現するには何度も色を作り、重ね合わせ、色を決めていかねばならないことから、レプリカ制作決定後すぐに黒色の配合研究に着手して頂きました。そして今日はいよいよ生地に色をのせていく本番の作業。この作業を行って頂くのは友禅職人の松村勲さんです。

     

  旧衣装の黒竹垣   新衣装の黒(途中)

 

黒の復元研究は最終的に3つの候補に絞られました。吟味した配合で作られた黒を1回塗ったもの、2回塗ったのもの、紫の上から黒を塗ったもの。旧衣装の黒と比較し、一番合ったのは紫の上から黒を塗った色でした。これにより黒に深みを出し、青味寄りの黒を再現します。

 

  左から黒1回、黒2回、紫×黒     紫を塗った上から黒を塗る


では色を塗っていきます。伸子で張った生地に黒の染料をのせ、小さな刷毛でなでるように塗っていきます。塗りムラにならないように何度か重ね、このあとの蒸し・水洗の作業で色が落ちないよう、丁寧に均等に塗っていきます。

 

 作業し易いよう生地を伸子で張る     様々な色と刷毛や筆
    紫の上から黒を重ねる  色が均等になるよう丁寧に塗る
    端もしっかりと塗る         完成


 

動画でみてみましょう。

        

 



色を塗るという作業は、言葉では簡単な作業に聞こえるかもしれませんが、経験と美的感覚が必要な、大変繊細な作業です。目で見た見本色を、知識と経験による配合で実際の色を作り、染めムラが出ないよう生地にのせていきますが、その日の天候や湿度によっても色のノリが変わるため、それらを加味しながら塗り加減を考えていかねばなりません。特に今回は事前に紫がのったところに黒を重ねていく作業。紫に対して黒がどの程度色が入っているのか、ムラにはなっていないか、などの判断がとても難しいことと察します。それらをいとも簡単そうに作業されている姿を拝見し、改めて職人の凄さ、技術の高さを感じました。その高度な技術がこれから先も継承されることを切に願うばかりです。




     団扇模様の色も検討

 

この日の工程は、

→色を配合し、決定する
→生地を伸子で張る
→刷毛で色を塗る
→乾燥
→完了


次は蒸し・水洗の作業です。

 

 

 

 

 

 
 
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